【石見銀山を巡る毛利vs尼子の10年戦争】戦国武将を狂わせた「銀の魔力」

銀を手に入れた、毛利元就と尼子晴久 戦い

石見(現在の島根県西部)の山奥に眠る「石見銀山(いわみぎんざん)」

戦国時代後期から江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた、日本最大級の銀山です。

当時、世界有数の銀産出量を誇っており、世界経済をも動かす巨大な利権でした。

この莫大な富を巡り争った二大勢力、毛利氏尼子氏

彼らが繰り広げた「10年戦争」の全貌を解説します。


石見銀山が戦国武将を「狂わせた」理由

石見銀山では「灰吹法(はいふきほう)」と呼ばれる精錬技術によって、不純物の少ない高純度の銀が大量に生産されていました。

この銀山から産出される銀は、軍資金や上納品として用いられるだけでなく、対外貿易においても極めて高い価値を持っていました。

そのため「石見銀山を支配下に置くことは、莫大な富と経済的優位を手にすること」を意味していたのです。


石見銀山争奪戦

もともと石見銀山の利権は、周防の大内氏が掌握していました。

大内氏は山吹城を築城し、銀山防衛の拠点としました。

その後、大内氏の衰退に乗じて「出雲の尼子氏」と「安芸の毛利氏」が本格的な争奪戦を開始します。

大内氏と尼子氏の攻防

天文6年(1537年)、尼子経久が石見へ侵攻し、銀山を占拠しました。

後の天文8年(1539年)には、大内氏がこれを奪い返します。

天文10年(1541年)になると、尼子晴久が当主となった尼子氏が再び銀山を掌握。

以後も両氏による激しい争奪戦が展開されました。

毛利氏と尼子氏の激突

大内義隆の死後、大内氏は急速に衰退していきました。

これに代わって勢力を伸ばしたのが、毛利元就を当主とする毛利氏でした。

毛利氏は中国地方における新たな有力大名として台頭し、大内氏に代わって石見銀山をめぐる争いに加わることとなりました。


山吹城攻防戦:銀山を巡る死闘

石見銀山争奪戦のクライマックスは、常に銀山を見下ろす「山吹城」で繰り広げられました。

忍原崩れと降羅坂の戦い

忍原崩れ

厳島の戦いの後、毛利氏は防長経略を進めました。

その過程で、山吹城を守っていた刺賀長信が毛利氏に臣従。

これにより弘治2年(1556年)、山吹城と石見銀山は毛利氏の領有となります。

ところが同年または永禄元年(1558年)、尼子晴久が山吹城を攻め、毛利軍を破りました。

この結果、尼子氏は石見銀山を奪還します。

山吹城には、尼子氏に仕える国人である本城常光が城主として入ることになりました。

この戦いは「忍原崩れ(おしばらくずれ)」と呼ばれます。

永禄2年(1559年)、毛利氏は山吹城を奪取すべく出陣します。

しかし尼子方の猛烈な反撃に遭い、またしても敗北を喫しました。

元就の次男・吉川元春ら勇猛な将をもってしても山吹城の守りは固く、毛利軍は撤退を余儀なくされます。

この戦いは「降露坂の戦い(ごうろざかのたたかい)」と呼ばれます。

※ただし当時の史料に明確な記述が見られないことから、この戦いは実在しなかったとする説が有力とされています。

10年に及ぶ抗争の終焉

永禄3年(1560年)、尼子晴久が急死すると、中国地方の勢力図は一気に塗り替わります。

後を継いだ尼子義久は家中の動揺を抑えるため、毛利氏との和睦を結ぶことを決意しました。

これを受けて元就は、毛利氏に有利な条件で尼子氏との和睦を成立させます。

これがいわゆる「雲芸和議(うんけいわぎ)」です。

そして永禄5年(1562年)、本城常光を降伏させ、ついに山吹城を手に入れることに成功しました。

その後、永禄9年(1566年)には尼子氏を滅亡へと追い込み、毛利氏は中国地方における確固たる覇権を確立することとなります。

こうして石見銀山を巡る約10年にわたる争いは、毛利氏の勝利によって幕を閉じたのです。


毛利氏による銀山経営とその後の石見銀山

石見銀山

銀山を完全に掌握した毛利氏は、織田氏という中央勢力とも渡り合うほどの実力を蓄えることになります。

織田信長によって京を追放された将軍・足利義昭を庇護し、織田氏と天下を競うほどの勢力を誇りました。

その背景には、この銀山に支えられた強大な経済力があったのです。

その後の石見銀山

慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いの後、石見銀山は江戸幕府の直轄地となり、山吹城はその役割を終えて廃城となりました。

今日、世界遺産として親しまれている石見銀山。
その静かな風景の裏には、かつて戦国武将たちが一族の命運をかけて争った「激動の経済戦争」の記憶が刻まれているのです。


侍のコメント
侍のコメント

石見の銀は、まさに戦国の世を動かす毒にも薬にもなる宝。
莫大な富が歴史を狂わせる様、実に見応えのある一戦であった。

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