【武家の美意識】「武家茶道」上田宗箇流とは?他の流派とは異なる3つの特徴

戦国時代

茶道と聞くと、千利休が確立した侘び寂びの精神を重んじる千家流を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、戦国時代の武将たちが育んだ独自の茶道、武家茶道も存在します。その代表的な流派の一つが、「上田宗箇流(うえだそうこりゅう)」です。

豊臣秀吉の家臣であり、後に浅野家に仕えた武将・上田宗箇(上田重安)によって創始されたこの流派は、千家流とは異なる独自の美意識を持っています。ここでは、上田宗箇流がなぜ「武家茶道」と呼ばれるのか、その特徴を3つのポイントに絞って解説します。


1. 刀を差したままの作法

上田宗箇流の最大の特徴は、武士が刀を差したまま茶を点てる作法です。千家流では、茶室に入る前に刀を刀掛けに置くのが一般的ですが、上田宗箇流では刀を身につけたままお点前を行います。これは、いつ何時でも主君や家を守るための緊張感と覚悟を表現したもので、武士としての心構えを茶道に取り入れたものです。


2. 力強く、大胆な所作

茶道の作法は一般的に優雅で柔らかな所作が特徴ですが、上田宗箇流は力強く、きびきびとした所作が重んじられます。これは、単なる優美さだけでなく、武士らしい凛とした気風を体現するものです。

例えば、茶碗を扱う際に、千家流では両手でそっと包むように持ちますが、上田宗箇流では片手でしっかりと持つ作法があります。これは、戦場で片手で槍を扱いながら、もう片方の手で茶を点てることを想定したとも言われています。


3. 自然の景観を取り入れた「露地」と「茶室」

上田宗箇流の茶室は、自然の景観を大切にした造りが特徴です。特に、茶室へと続く庭である露地(ろじ)は、まるで山野を歩くような感覚で造られています。

これは、宗箇が毛利家再興の地である広島の自然を愛し、その美しさを茶の湯に取り入れたためと言われています。

  • 露地の特徴: 自然石や苔を活かし、野趣あふれる景観を造り出す
  • 茶室の造り: 窓を大きくとり、露地の景色を大胆に取り込む
  • 精神性: 派手な造りではなく、自然との調和を重んじる

これらの特徴は、戦場を生き抜いた武将の心が、自然の中に安らぎを見出したことを示しています。武家の美意識と、自然への畏敬の念が融合したのが、上田宗箇流の茶道なのです。


まとめ

上田宗箇流は、創始者である上田宗箇の武将としての生涯と、彼が仕えた毛利家、そして広島の風土が育んだ独自の流派です。刀を差したままの作法や力強い所作は、武士の精神性を色濃く反映しており、他の流派とは一線を画します。

これらの特徴は、単なる作法ではなく、武士の美学と生き様そのものと言えるでしょう。

上田宗箇流/公益財団法人 上田流和風堂
公式HP:https://www.ueda-soukoryu.com/


茶人のコメント
茶人のコメント

千家流とは異なる、刀を帯びたままの所作。それは単なる型にあらず、いつ何時も主君や国を守るという、武士の覚悟が茶に込められた証。
このような茶の道があることを、多くの人に知っていただきたいものですな。

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